「永遠の0」
―百田 尚樹―
★★★★★★★★☆☆8/10
大きな雲に覆われた空からすっと光がさす。雲は物凄い勢いで風に流されてゆき、そこからカラッとした太陽と爽やかな青空が覗き、海と空が一つになるような気持ち。読後、大粒の涙を流しながら本の表紙と似た光景を想像する。目から涙がこぼれると、自分は日本人なんだという事をはっと思い出す。普段何事もないように淡々と生きていると、自分が日本人だという意識がとても薄くなっているのだ。それは人間というか個人という感じで生きているんだと思う。とても恥ずかしい気持ちになりながらも、どこか心を洗われたような気もしている。
第二次大戦中の零戦乗りを描いた話だが、物語は現代から始まる。零戦乗りで終戦直前に特攻で死んだ男の孫たちが、なぜおじいちゃんは特攻に反対し続けたのに自ら志願して死んだのかという謎を解く為に、戦時中に祖父の事を知っていたという関係者を探し、それぞれの人達の印象と思い出を語ってもらいながら、戦史を振り返るという構成は「半落ち」にどこか似ている。語りは、夏休み田舎へ帰ると、おじいちゃんが戦争の話を孫に聞かせてくれているような調子だ。だからなんとなく、読んでいる自分もそこで座って聞いている気がする。
命を道具のように扱い頑張ってる者が苦しみ、現場に立たづに死なない者は保身に走る当時の日本に怒りを感じさせ、戦争で亡くなった人達が今の日本を見たらどう思うだろうか?という戦時と現代についての問題を分かりやすく提示してくれる本書は本当に深く考えさせられる。
この日本の未来を懸け、命がけで戦った人たちがいたということを、私たちは自発的に思い出し続けなければいけないんだと思った。きっとそれだけで、自分の中で何かが変わる。そんな気がする。
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