
「英国王のスピーチ」
★★★★★★★☆☆☆ 7/10
公開から3週間以上経ってようやく見ることができました。アカデミー賞受賞後は常に混み合っていまして、いつも満席御礼でした。毎度毎度泣く泣く劇場を後にしていました。大きな劇場でならもちろん余裕で見ることはできたんですが、時々、小さな劇場で見たくなる事があるんです。「英国王のスピーチ」はどうしてもミニシアターで見たい!と、こだわっていたのでそこんとこは妥協は許されません。
ということで先日、渋谷Bunkamura ル・シネマにて鑑賞しました。ここは劇場内に飲食物を一切持ち込んではいけないという珍しい映画館です。とにかく映画に集中してくれって事ですね。
震災後だというのに相変わらず劇場は混み合っていました。こんな時に映画見に行ってていいのかな?とは思ったのですが、震災があったことが影響して私はこの映画が余計に見たくてしょうがない心境になったのです。前日に管さんの会見を見たからです。国がピンチな時に必要とされる言葉・リーダーシップとはなんだろう?と考えました。そのヒントがこの映画にないだろうかと思ったのです。
肝心の映画なのですが、まさに正統派のアカデミー賞向け映画といったでした。ストーリーに大きなひねりは無く、あくまでストレートに人間ドラマを描いて、その中に少しのユーモアを加えて最後まで観客を飽きさせません。ここの所、一気に株を上げているコリン・フォースの演技には圧巻です。スピーチの場面は、分かっているのにドキドキしてしまうくらい引き込んでくれます。脇を固めるジェフリー・ラッシュやヘレナ・ボナム=カーターも素晴らしかったです。ヘレナが演じるエリザベス妃は本当に美しくて魅力的だった。
これは一つ気になった演出なのですが、役者が個人でアップで映し出される時に、間があるんですよ。時間的な間ではなくて空間的な間。これが凄く効果的な演出に感じる事ができました。見ている私たちが映画を見ながら何か考える時、そこの間に目が言ってしまう。考える間ですね。どんな意図があるかは分かりかねますが、私はそこを一つの避難所として使っていました。
映画の見所はやはり一番最後のスピーチの場面です。今までまったく駄目だった王が、やっと素晴らしいスピーチをした時のカタルシスはとても心地良かったです。
劇中で王に対して多くの人が、
「あなたは勇気があるお方だ。」
と言います。最後のスピーチの場面は特別かっこいい台詞を言っているというわけではありません。しかし、彼の言葉は国民の心に響いた素晴らしいものでした。それは、立ち向かうことを諦めかけていた吃音症と闘うと決めた強い心と、国民に自分の言葉を伝え勇気を与えたいという必死の思いが合わさって完成したスピーチでした。
私たち国民が国のトップに求めている言葉は、別に専門的な知識や新しい情報ではありません。私たちを奮い立たせてくれるような勇気のある言葉が欲しいのです。それが成される為にはまず、本人が必死でなければいけません。ジョージ六世という王は自分の欠点から逃げないで向かい合う勇気を持った素晴らしい人だと思いました。
原題はThe King's Speech といいます。邦題では伝えられない憎い工夫がここにもされていす。King'sが複数系になっています。これは奥様の事や言語聴覚士の事も指して複数形にしているのだろうと思います。ジョージ六世を奮い立たせる勇気は自らの力だけで起こしたわけではないという事です。
日本の王の言葉に私はまだ、勇気を感じません。
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