もうひとつのハリウッド
映画にはアカデミー賞やゴールデングローブ賞といった華やかな賞レースが沢山ある。そんな中でも個人的に好きな賞が今回発表されたインディペント・スピリット賞である。どのような映画が選ばれる賞か?というのをザックリ説明すると3つある。
1,上映時間が70分以上
2,所定の期間内に一週間以上商業公開がされている、もしくは指定された映画祭で公開されている。
3,制作費が2000万ドル以下(個人的にこれが一番重要だと思う)
最近のハリウッド映画は制作費1億ドル(ざっくり100億と考えよう)なんて当たり前になってきている。俳優のギャランティの高騰や(因みに来年公開のパイレーツ4に主演のジョニーデップのギャラは57億円)特殊効果の使いまくり等などの理由でどんどん制作費は高くなっていく。おかげさまでハリウッドムービーといえば「アルマゲドン」や「トランスフォーマー」といった派手なアクション映画をイメージする人が多い。でも、そんなにお金かけずとも良い映画は作れるぜ!と言っているのがインディペント・スピリット賞なのである。この賞の特徴のひとつは、新人賞的な賞を贈られることだ。これをきっかけに注目され、今ではハリウッドのトップクラスにいる監督や俳優は沢山いる。(もちろん既に名前が売れている人もこの映画賞は該当される)たとえば、「セックスと嘘とビデオテープ」(後に「オーシャンズ11を撮ったスティーブンソダーバーグ」)・アカデミー賞で作品賞も受賞した「プラトーン」(ってかあの映画制作費そんなに安かったのかい!)・もはや日本でもおなじみ、クエンティンタランティーノの「パルプ・フィクション」等、今となったらかなり有名な映画ばかりだ。ひょっとしてアカデミー賞よりもこっちの方が面白そうかも。。。
派手さや華やかさばかりがハリウッドではない!ちょっと地味に見られがちなインディペンデント系映画で構成されたこちらの賞は、ある意味ハリウッドのもうひとつの顔なのだ。ミニシアター系映画を見るならヨーロッパ、とか思っている人は勿体ないよ。
今年のノミネート作品
では簡単に紹介しましょう。
127 Hours
「スラムドック・ミリオネア」で有名なダニー・ボイル監督が、青年冒険家のアーロン ラルストンのノンフィクション小説「奇跡の6日間」をスタイリッシュな映像で映画化。物語も面白そうだが、とにかく大自然が素晴らしく美しい。その美しさと対象的に主人公は地獄へと落ちていく対比がまた面白い。
BLACK SWAN
続いては「レオン」のマチルダや「SW」のアミダラでおなじみのナタリーポートマンが主演、バレエ界に渦巻く嫉妬・野心などを描く心理スリラー映画。監督は去年「レスラー」という映画でインディペンデント・スピリット賞作品賞を受賞したダーレン・アロノフスキー。二年連続での受賞なるか?
Greenberg
コメディアンのベンスティラーが今回はちょっと真面目な役に挑戦。(てか、ちょっと老けた気が・・・)元バンドマンが次の生きがいを見出せず、仕事もしないで悩んでいた駄目兄貴を裕福な弟が自分のところのベビーシッターとして雇った。そんな生活を続けているうち、歌手の卵の女性に出会い、恋に落ちるのだが・・・
音楽が素敵なお洒落映画。
The Kids Are All Right
お洒落映画といえばこちらも負けていない・・・が、内容はなかなかヘビーなテーマっぽい。レズビアンのカップルが精子を提供してもらい人工授精をして2人の子供をもうけた。成長した子供が精子を提供してくれたお父さんを探し出してきてしまい大変なことに!ってお話。アメリカ的な内容だから日本じゃ公開されないかもな~。
WINTER'S BONE
最後に紹介するのはインディペンデント・スピリット賞で最多5部門でノミネートされている大本命。主人公は17歳の少女。父親はドラックの売人で現在失踪中。ある日、父が家を保釈金の担保に出している事がわかり、家を差し押さえられるという事がわかる。少女は病気の母や幼い妹弟を守るために、父親を探す旅に出る。彼女が危険な裏社会で見たものとは?
3D映画の普及
お金をあまりかけずに作った映画って自由がそこまで利かない分、作っている人たちはお金をかけずにどう面白く見せるか?という工夫を沢山するから、派手な映画じゃなかったけど、俳優さんたち良い演技だったよねとか、短い話だったけどホロりと泣かせてくれる良い話だったな、といった事に目がいきやすい。これはある意味、映画の楽しみ方の原点なのかもしれないと思う時がある。
今年はまさにハリウッド的な3D映画が爆発的に普及した年である。だから、どうしても大味な映画が増える。それももちろん面白いに違いない。しかし、そればかりがハリウッドであると思ってほしくない。ハリウッドのもうひとつの顔をたまには劇場で見てみるのもいかがだろうか?
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