「アメリカン・ビューティー」 (1999)
評価・・・・★★★★★★★★☆☆ 8.0/10
注意:ネタばれ有り
「アメリカン・ビューティー」を見たのは中学生の時だ。アカデミー賞でかなり話題になっていた作品だったから、あまり内容に興味は沸かなかったけど話題作は見ておきたいのでとりあえず親父と一緒に見に行った。そして、帰りの電車の中で微妙な空気になったのをよく覚えている。家庭崩壊が描かれている映画を家族と一緒に見るものではない、と、心から反省した。
映画の内容は、家庭が崩壊しかけ、自分は死んでいるも同然と思っている男が自分の娘のかわいい同級生に一目ぼれしてから、彼女とセックスをしたい欲求に駆られて体を鍛えたり、生き方を変えていこうと努力する姿が描かれ、やっと主人公にとって良い方向へ向き始めたと思ったら殺されてしまうという映画。この映画のどこが面白いんだよ!と思うかもしれない。映画のラストシーンで主人公のナレーションが入る。彼は皮肉ではなく、本当に良い人生だったと振り返っている。
世の中は嫌な事がたくさんあるがそれ以上に美しいものがたくさんある。あまりの美しさに圧倒され、張り裂けそうになり、風船のように自分の空気を抜く。周りから見れば私の人生はしょうもうないものだったのかもしれないが、私はそう思わない。皮肉に聞こえるかもしれないが、君にもいつか分かる。
そんなような事を言っていた。
「君にもいつか分かる」・・・か。
この映画のテーマは「再生」である。タイトルの「アメリカンビューティー」の意味は、映画の中でもたくさん出てくバラの品種とアメリカの美である中流家庭が今、崩壊しかけているという事を皮肉った意味を持つ。
先日、こんな記事を見つけた。
「newsweek」
「 近年私たちが中流階級と思っていた存在は、ほとんど錯覚だったことが明らかになった。米政府が作り出し、家計の膨大な借金によって支えられてきた幻想だ。クレジット・カード、住宅ローンの借り換え、所得証明もいらない融資──すべては、風と共に去った。残ったのは、資産より大きな負債をかかえているか毎月食いつなぐのがやっとの階級だ。もし新たな中流階級を作り出せなければ、アメリカがこの財政赤字を克服し危機から脱出できる見込みはない。」
映画には見るタイミングというのがある。「アメリカンビューティー」をもう一度見直す機会が来たと思った私は、今の世の中と自分の現状を照らし合わせながら、一人で見てみる事にした。
二度目の感想は、ため息が出るくらい素晴らしい映画だったという事に気づかされた。中学生の頃の私には理解できる内容ではなかったが、あの時一度見ておいて本当によかった。でないとこの感動を今味わうことは出来なかったからだ。映画の中で有名な場面がある。ゴミ袋が風に舞ってる姿をホームビデオで撮影して、そのテープを鑑賞している場面だ。現実でも見かける場面だ。このゴミ袋をただのごみ袋と見るのか、美しいと感じる事ができるのかは人それぞれだが、たかがそんな事でも美になってしまうという事に気づかされる場面である。
主人公の言葉を思い出す。
世の中には美が溢れている。
私にとってこの映画は最初、あまり好きな映画ではなかったが、時間をかけ、美に気づく事ができた事によって好きな映画に変わった。
君にもいつか分かる。
その通りだった。
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