
「HANA-BI」
★★★★★★★★☆☆8/10
カタルシスとは「精神を浄化させる」「抑圧からの解放」といった意味がある。映画や文学作品でよく使われる手法だ。例えば、殺人事件が起きて犯人を探すことになる。こういう物語は大抵途中で真犯人が分かるという事は無い。(最初から犯人が分かっているパターンはある)事件が起きる序盤、犯人探しの間に伏線を散りばめる中盤、最後の最後に犯人が分かる終盤。つまり、張られた線が点になった瞬間に起こるスッキリとした気持ちがカタルシスという事になる。
たくさんの映画を見ているが、その中でも何度も繰り返して見る映画はこの手法が実に巧みである。いくつか作品を挙げると・・・
「シンドラーのリスト」の主人公がユダヤ人の前でスピーチをしてから車に乗り込もうとする時、一気に感情を表に出して泣き崩れる場面は主演のリーアム・ニーソンの名演に心打たれる。
「ショーシャンクの空」は、無実の罪で捕まった主人公は脱獄をする気配もなく何十年も刑務所で暮らしていた。しかし、ある日、突然華麗なる脱獄をして今まで酷い仕打ちをしてきた者達に天罰が下る場面はとにかく爽快!
「容疑者Xの献身」では、最初から犯人が誰か分かっているのに最後に分かる犯行の大仕掛けに涙、涙。
不思議なもので、映画がいくら退屈に描かれていても、最後に自分好みのカタルシスを感じるとその場面が見たいが為にその映画を何度も見たくなるし、退屈に感じていた場面も二度目の鑑賞からは退屈に見えなくなってくる。
北野武監督の代表作「HANA-BI」もそんな作品に当てはまる。”キタノブルー”を覆った芸術性の高い映像の中で台詞は少なく、物語はいたってシンプルで静かに物語が進んでゆく。不治の病を患い、映画が始まってから一言もしゃべることのない奥さん役を演じた岸本加世子が夫に一言だけ口を開く場面。号泣とまではいかないけど、ホロッと泣かされる。そして、美しいブルーと2発の銃弾で全てが洗い流される。
この映画はヒットはしねーだろうなぁと苦笑してしまうが、私はとっても好きでした。
全編に流れる久石嬢の音楽が印象的。映画における音楽の重要性を再認識した。だってこの音楽がなければ多分途中で私は飽きていただろうから。
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