1979年、宮崎駿がモンキーパンチ原作の「ルパン三世 カリオストロの城」を制作し、次回作でオリジナル作品「風の谷のナウシカ」を大成功させ、スタジオジブリを設立し現在まで至る道。
2006年、細田守が筒井康隆原作の「時をかける少女」を制作し、次回作でオリジナル作品「サマーウォーズ」を発表、このアニメの成功を受け「スタジオ地図」を設立し、今年の夏、その記念すべきスタジオ初作品「おおかみこどもの雨と雪」が公開された。
偶然とはいえ、細田守が今歩んでいる道と宮崎駿の歩んできた道に共通点を感じずにはいられない。日本には素晴らしいアニメ監督がたくさんいるが、世代を超え幅広い年齢層に支持される内容でかつオリジナル作品を作れる監督は少ない。未だに宮崎駿が健在とはいえ、最近のスタジオジブリを見ると若手監督の育成に力を入れ、新たなる”宮崎駿”を探している段階だ。あれほどの人間は育ててもなかなか現れないだろう。彗星の如く、突然どこからともなく現れるものだ。
私は細田守こそ、第二の宮崎駿になると思う。先日、スタジオ地図の初劇場アニメ「おおかみこどもの雨と雪」を観てきた。前作の大ヒットを受けた後の作品というのは次は大丈夫かな?と不安視する疑い深い私だが、なぜか細田守作品にはそんな気持ちは湧いてこなかった。絶対に大丈夫という安心感も宮崎駿の作品とよく似ている。予想通り、期待を裏切らない、誰もが安心して観れるアニメだった。
台詞がとても少く、派手にカメラを動かすわけでもなく、話に大きな波もないのだが、なぜか退屈せずに楽しめる。細かく見ると技術的に素晴らしい事をしているのが分かる、でもこのアニメが持つ最大の魅力は主人公の”花”である。富山の村人たちが花ちゃんをほっとけないように、映画館で見ている私たちも村人と同じような気持ちで花ちゃんを見守る。しかし、村人たちは知らない。花ちゃんの子供は”おおかみこども”だということを。それは映画を見ている私たちと花ちゃんだけの秘密であり、私たちはその秘密を共有することで、この平坦な物語でも少しの緊張感を持ち続けて見ていられるし、花ちゃんに感情移入しやすい設定ができてしまっている。声優をつとめているのが宮崎あおいだというのもずるい。とても良い演技をしています。
「おおかみこどもの雨と雪」は現代を舞台にした童話。まるで、「アルプスの少女はハイジ」や「母をたずねて三千里」などの名作童話を観たような気持ちだ。だから、「サマーウォーズ」と同じようなハラハラドキドキする活劇を期待したら残念になる。観客は前作と同じ雰囲気でいて、もっと面白いものを期待する贅沢者である。だが、そういった期待を良い意味で裏切り、全く違う作風の作品を描ききった細田守は本物のアニメクリエイターなのだろう。
”第二の宮崎駿”なんてすぐに言われなる。”第二の細田守”となる新しい風が今後のアニメ業界に現れる未来もすぐに訪れるだろう。
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